秘密のラブロマンス~恋のから騒ぎは仮面舞踏会で~
6.伯爵子息の独壇場

コルネリアがいる部屋を出て、ギュンターは一度息を吐き出した。

コルネリアの話は筋が通っている。
もちろんヴィリーにも確認するつもりだが、ギュンターは彼女の話をまるまる信じるつもりでいた。

となれば情報を整理するべきだろう。
思惑で話す公爵の話を鵜呑みにしていたら、混乱させられてしまう。

まず注意するべきポイントは、誘拐犯はエリーゼを狙ったのか、それとも誰でもよかったのか。
それによって犯人の目的はまったく変わってくる。

エリーゼがつれこまれたという箱馬車は庶民が手に入れられるものではない。
通常、一般庶民は移動は徒歩か乗合馬車だ。頑張ってもせいぜい幌なしの馬車であろう。であれば、貴族の誰か、もしくは貴族の後押しがある誰かと考えるのが普通だ。

仮説を立て、今まで入手した情報と照らし合わせていく。
一番矛盾のない筋が真実に近いはずだ。

考えながら応接室に戻ると、公爵はいまだ持論をクラウスにぶつけていた。


「コルネリアがエリーゼをさらったに決まっている。大方宝石だってそうだ」

「あーはいはい。そうかもしれないですね」


クラウスの返事はもはや適当だ。一応王子なのだから発言には責任を持てと言いたい。
ギュンターは咳ばらいをしてふたりの注意を引き付けると、用件だけを告げた。


「クラウス、騎士団の人間を数人借りたい。あとは馬を」

「ギュンター、話はきけたのか?」


クラウスがホッとした様子で顔をあげ、公爵も我先にとギュンターに寄ってきた。ギュンターは公爵の機嫌を損ねないよう、笑顔で応じる。
< 69 / 147 >

この作品をシェア

pagetop