朝、目を覚ました桜子はふと思う。

 ……このビルに私の許嫁が居るってどういうことだ、と。

 夕べは佐丸が恐ろし過ぎて、そっちばかりが気になって、話の内容に集中できなかった。

 年頃の娘としては気になるところだ、と今更ながら思いつつも、あまり実感がなく、リビングに行くと、もう佐丸は起きていた。

「おはよう」
と言いながら、今朝はなんでもうスーツ? と思っていた。

 さすがにこのビルで、如何にも執事でございます、という格好はしていないが、仕事中はいつもダーク系のスーツを着ている。

 佐丸はなんでも似合うけど、こういう色が一番顔が映えるなと思っていた。

 色が白いからだろうか。

 体育祭の頃とか、うっかり焼いて、佐丸より随分黒くなってしまった嫌な過去を思い出しながら、もう取ってきてあった新聞を読もうと椅子を引いたとき、佐丸がようやく言ってきた。

「おはようございます、桜子様」

 桜子は開きかけた新聞から目を上げると、テーブルの向こうで、こちらを向いて立つ佐丸を見る。

「……まだ9時半じゃないけど?」

「わかっております」

この作品のキーワード
ラブコメ  御曹司  富豪  オフィスラブ  ほのぼの  秘書  大人の恋  逆ハー  社長  身分差 

感想ノートに書き込むためには会員登録及びログインが必要です。