離婚前提策略婚。【改訂版】

龍成の悪夢

「俺が結婚?するわけないだろ」


久しぶりに帰った実家のリビング。相変わらず無駄に広い。誰もいない時間の方が長いってのに。


テーブルを囲うようにあるソファーに麻友ちゃんは座り、俺はそのソファーの背もたれに裏側から軽く腰掛ける。


「もう決まったの。あなたに拒否権はないわ」

「俺、麻友ちゃんがそんな女だと思わなかった」


麻友ちゃんの肩に腕を回すも、軽く振り払われる。


「とても素敵なお嬢さんよ。あなたもきっと気に入るわ。あんな大和撫子、他にいない。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。この言葉がこれほど当てはまる人はいないわ」

「そんな麻友ちゃんみたいな女、いないね」

「何を言っても無駄よ。あなたはそのお嬢さんと結婚するの。うちの会社の流通部長のご息女で桜庭華乃さん。あなたと同い年よ」

「つーか急すぎだろ」

「もういい年齢なんだから、会社を継ぐために勉強しないとね。家族を持つんだから」
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