クールな御曹司にさらわれました
プロローグ



何この車、すっごい高そう。

私、真中妙(まなかたえ)最初の感想です。

いや、高いでしょ。国産車の最高峰のロゴがさっきちらっと見えたもん。車に詳しくない私だってわかる。きっとSランクとかそーいうヤツ。

いえいえ、そうではないんですよ。問題はそこじゃないんですよ。

現状私の目の前にその車の後部座席のシートが迫っております。
比喩ではありません。鼻のほんの2センチ先にシート。顔面がシートに接触するまで約3秒。

私、後ろでに両腕をまとめられ、高級車の後部座席に押し込められそうになっております。

「離してください!」

シートにキスする前に首をねじって、一応叫んでみる。
無反応―。想像通りー。

じたばたと暴れてみる。再三行った抵抗を再び。
はい、びくともしないー。うん、知ってたー。

「これじゃ、誘拐です!警察呼びますよ!」

ぐいぐいと後部座席に突っ込まれながら、もう一度渾身の声で怒鳴る。
反応はなく、代わりに大きな手が両腕を解放するなり、私の背をどんと押した。もんどりうつだけのスペースがある高級車が憎いぜ。私は無様に後部座席に顔から突っ込み、その後足元のスペースに転げ落ちた。

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