クールな御曹司にさらわれました
4.残業します
朝のデスク、昨夜の疲れを引きずった私が突っ伏す横で、同期の小森はヨーグルトで朝食中だ。機能性ヨーグルトではなく、小学生がおやつで食べそうなフルーツたっぷりのやつね。なんだ、その可愛い朝食。
「息抜き失敗~?」
小森は幸せそうにフルーツを口に運び、呑気に笑っている。
「想定より大変だったかな。息抜きっていうか、修行だった」
「お疲れ、でも真中、パワーついたよね」
「体力は元から結構あるよ」
お金がない分、体力と知力でカバーしなきゃならないことって結構あった。
小森が寝癖のついた頭をゆるく振る。
「バイタリティはもとからあったけど、割と流されがちだよね。長いものにぎゅうって巻かれる系」
「好きで巻かれてない。こういう生活してくると、その方が楽ってわかるのよ。処世術よ」
不本意だけど、長いものに巻かれないと、うまくいかないことが多いんだもん。父親関係で頭下げまくったり、逃げまくったりしてるとさぁ。
「でも、御曹司には反抗的」
「オイルマネーダーリンに売られちゃうのが嫌なの!!」
私は顔を起こし小森を睨む。
さっき給湯室でいれてきたコーヒー入りマグカップを手にとると、背後に気配を感じた。