私はその日、浴衣を前にしてため息をついていた。

……行きたくない。
いや、行きたい……かも。
しかし行ったとして、彼となにを話せばいいんだろう?

思い悩んだところで時間は刻一刻と迫ってくる。

……行く、か。
だって行くって返事しちゃったんだし。
ドタキャンはさすがにまずい。
それにそんなことしたら、次から顔をあわせづらくなる。
……まあ、行ったところでそうなる可能性もあるのだけれど。

重い腰を上げると、私は浴衣へと手を伸ばした。

 
私は会社で、コーヒーの係をしている。

要するに、豆の補充やなんか、そういうこと。

発注はしなくても、メーカーの人が定期的やってきて、減った分を補充してくれる。
一応、そのときサインとかでメーカーの人と話したりもするのだけれど、彼はいつも、超無表情で事務的で。

私も関心がないから気に留めたことはない。
いつも事務的に「はい」ってだけ返してた。