Spider
梅雨も明けたある日、いつものように彼がやってきた。

コーヒーを補充してもらい、不都合はないか聞かれ、特になにもなかったから大丈夫だと返し。
そして納品書にサインして。

「はい。
ご苦労様でした」

「ありがとうございます。
……ところで、もうすぐ花火大会ですね」

「はい」
 
……あれ?
珍しく、そんな話題?

確かに来週末は大きな花火大会がある。

「私と一緒に花火大会、行きませんか?」

「はい。
……えっ?」

惰性ではいと返事をしながら、次の瞬間、驚いて聞き返した。

じっと彼が見つめてくる。
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