煙草?どっち?
煙草?どっち?
 ふぅーっ。

課長の口から細く、煙が吐き出される。
その前にただ、黙って座っている私。

「で?どういうこと?」

とんとん、灰皿で軽く灰を落とすと一口吸い、また細く煙を吐き出す。

「どういうって……」

組まれた足が苛々と揺れる。
人差し指でブリッジを押し上げられた、リムレス眼鏡の向こうからは冷たい視線。

私はいま、課長に説教されているのだ。

……プライベートなことで。

 
そもそもの発端は社内で、同期の男性と私が親しげに話していたこと。

いや、同期だったら結構気軽に話すよね?

でも、ヤキモチ妬きな課長はそれが許せなかったらしい。

おかげで終業後、近くのコーヒーショップに呼び出されて説教されている。

「男と話すなとは一言も云ってない。
でも、角倉はダメだと云ったはずだ」
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