愛され系男子のあざとい誘惑
愛され系王子の秘密基地
悲鳴が響き、私たち二人を携帯のカメラで撮る人たちも多数。こんなのSNSなんかに載せられたらとんでもないことになる。


それなのに社長は楽しそう。「じゃあ行こうか」とあえてコーヒーショップの前を通り、エレベーターに乗り込んだ。


「社長、社長まで濡れちゃったじゃないですか。それに私の更衣室は22階ですよ。このエレベーター通り過ぎちゃいましたけど」


「本当だね。俺も着替えなきゃいけなくなっちゃった。それよりやっとキスできたね。もっとしていい?」


ギュッと力強く抱きしめられてそう聞かれる。そんなの聞かないでほしいのに、ジッと見つめられてまたあの意地悪な笑み。まるで私からしろと言わんばかりに感じられる。


「・・・別にいいですけど」


「何、その返事。俺だけ?優美ちゃんからちゃんと聞かせて。ちゃんと待ってたんでしょ?俺のこと。だからご褒美あげるよ」


「・・・ずるい、ずるいずるい。そんな言い方ずるいです。私ばっかり振り回されてる。そんな風に気のある言い方して」


「・・・ごめん、待たせて。ずっと探してたんだ。このビルにいるっていうことは分かってたから」


探してた?私を?社長は抱きしめる腕を解くとポケットから何かを掴み、そっと私に向けて手を開いた。
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