幼馴染と溺愛!?疑似結婚生活!
三、もう一度好きになると仮定しても。

「美結」
「……」

電話が終わった飛駒が、キッチンへ向かってくる。
が、顔を見ることが出来なくて俯いてしまう。

「急患が入ったから、早めに仕事行くわ」
嫌そうに言う飛駒だったが、私には救いの言葉だった。

「嘘!」
「そんな嬉しそうな顔するなら、やっぱ行かない」

泣きだしそうな声とは裏腹に、テキパキと準備している。
そんな行動を見れば、益々何を考えているのか理解に苦しむ。

「飛駒のお仕事は、動物の命を預かってるんでしょ。簡単に行かないとか言わないの」
「じゃあ、俺のご飯残しといてよ! ハンバーグ、大盛りで残しといてよ」
「今回だけね。明日からは一緒になんて住まないから!」

否定する私の言葉は、聞こえないふりをして、電話が終わってから10分もしないで準備をすませ、玄関へ向かう。

「美結、いってらっしゃいのキスとかしとかねえ?」
「さっさと行かないと、生肉ぺちぺちするよ?」

ハンバーグの種をぺたんぺたんと空気抜きしながら睨むと、さっさと玄関から出て行った。

「……」

玄関まで送ってあげるべきだったのかな。
そんな迷いが生まれるのは、ハンバーグを焼きだしたからだ。

キッチンに立つ私の足元のふみ台は、私の身長を熟知していてぴったりで使いやすかった。
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