小倉ひとつ。
「お疲れさまです。ご無理なさらないでくださいね」


労わりの眼差しにゆっくり頷く。


「ありがとうございます。月曜日にお休みをいただいたので大丈夫です」

「それはよかった。私としては、月曜日にお会いできないのは残念ですが」


さらっと混ぜられた冗談に、私も軽口を返した。


「光栄です。私も残念なので、是非火曜日に買いにいらしてください」

「ええ、それはもちろん」


ふたりでくすくす笑う。


瀧川さんは毎日いらっしゃるから、こういうことを言っても催促にはならない。


本心だけれど、ちゃんと軽口みたいになったはずだ。


……よし、つらくても火曜日を思えば頑張れる。いや、全然つらいことなんてないのだけれど。


書き留めを瀧川さんに向けて広げる。


お願いします、といつものペンを手渡しながら、瀧川さんの手をこっそり盗み見た。


今日は紫の爪をしていない。赤らんでいない、あたたかそうな手なので、多分ホッカイロは大丈夫だろう。

でも一応聞いた方がいいかな。


「よろしければいかがですか」


箱からホッカイロを取り出して両手で差し出すと、瀧川さんは朗らかに「ありがとうございます、大丈夫です」とお返事をくれた。


……くれたん、だけれど。
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