小倉ひとつ。

11.たい焼きとお薄

「お邪魔します」

「はい、どうぞ」


ばくばく言う心音を聞きながらエレベーターに乗り、真っ白な頭でお部屋の前に立つ。


なんとか発した声はひどくかすれていて、瀧川さんの声の穏やかさと相まって、私の緊張度合いを如実に示していた。


「コートはこちらにどうぞ。よろしければ、一度お荷物お預かりします」

「ありがとうございます、お願いします」


瀧川さんに荷物を持ってもらって、玄関先のポールハンガーの手が届くところにコートとマフラー、手袋をかける。

ブーツはシューズラックのお隣の隅に揃えておいた。


私に荷物を渡して、瀧川さんもコートを脱ぐ。


かけたポールハンガーのラックは一番上で、あんまり緊張するので、気もそぞろに私がかけたラックとの差を数えてみた。

一、二……知っていたことだけれど、瀧川さんは背が高い。そして私は全然落ち着かない。


「少し大きいかもしれませんが」

「ありがとうございます。お借りします」


言われた通り少し大きい冬用のもこもこしたスリッパは、冷えた足に温かい。


歩くと脱げてしまうほど大きくはなかったので、そのままお借りする。暖房もすぐにつけてくれた。
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