小倉ひとつ。

15.お祝いとお誘い

今日は一段と桜の香りがする。


うぐいす餅や桜餅もちらほら見受けられる時期になってきた。


私はうぐいす餅が好き。美味しいよね。うぐいす餅を見かけると、いつもふたつ買ってしまう。


朝早くお庭の木々の下を通ったら、木漏れ日がひどく美しかった。

優しい桜の香りにつられてか、日差しも春めいて少し柔らかい。


「おはようございます」

「おはようございます、いらっしゃいませ」


からりと引き戸を開けて目が合った瀧川さんが、瞠った拍子に瞬きをした。


「休日どちらもいらっしゃるなんて珍しいですね」


そう、今日は普段はお休みの土曜日なのである。休日出勤はこちらからお願いした。


「その代わり、今度の水曜日から日曜日まではお休みです」

「残念です。何かご予定が?」

「水曜日に卒業式がありまして。水曜日以降の残り四日はお休みをいただきました」


卒業式じゃなくて本当は学位授与式だけれど、長くて言いにくいので、友人間では簡単に卒業式って呼んでいる。


卒業式の日は学位授与式と写真撮影とお別れと謝恩会で一日潰れるのでともかくとして、いただいた四日間のお休みは、遠くに行く友人たちとのんびり過ごしたり、家でごろごろしたりする予定。
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