旦那様と契約結婚!?~イケメン御曹司に拾われました~



「いってぇ!!」



瞬間、響いた大きな声に私ははっと目を覚ます。

すると目の前にあるのは、痛そうに顔をゆがめた玲央さんだった。



「あれ……玲央、さん?」



座ったままできょろ、と辺りを見渡すと、そこは玲央さんの社用車の後部座席。

運転席に座る檜山さんの意外に丁寧な運転と長距離での移動、というわけで揺られるうちに心地よく眠ってしまったことを思い出した。



私の隣に座る玲央さんを見れば、彼が痛そうにさするその右手にはくっきりと歯型がついている。



「どうかしたんですか?」

「どうもこうも……噛んだんだよ!お前が!俺の手を!!」

「へ?そんなまさか、さすがの私でも人を食べたりは……」



怒ったように歯型を見せつける玲央さんに、鼻で笑うように言う。そんな私の態度にイラッとしたのか、その手で私の頬をつねった。



「気づけばうたた寝してるわ、起こそうとすればよだれ垂らしてるわ、拭いてやろうとすれば手噛まれるわ……えらい嫁だなぁ?おい?今夜夕飯抜きにするぞ」

「ゆっ!?それは困る!ごめんなさい!!」



食事がかかっているとなれば、私はすぐ態度を改め謝り倒す。その態度に、玲央さんは渋々納得したように頬から手を離した。



ていうか私、よだれ垂らしてたなんて……。

さすがに恥ずかしくて口元を拭うと、彼はため息まじりに窓の外へ視線を向けた。



その姿は、白いTシャツにデニムシャツ、グレーの細身のズボンといつもの仕事モードとは打って変わってラフな姿だ。

その後ろには車の窓のむこうに青い空と広い海がひろがっている。




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