彼の困ったような笑みが、なんだか嬉しくて、愛しくて。

この胸に、ときめきを感じてる。







「ノワール!こらっ、待てー!」

「ワンッ」



ある日の、水曜日の午後。

立花家の広い庭には、水しぶきがあがるとともに私とノワールの声が響いていた。



昨日や一昨日と、梅雨らしく雨が続いたここ数日。

やっとの晴れの日に、洗濯物を干して、家中の換気をして……ついでにノワールも綺麗に洗ってあげよう、と犬用のシャンプーでその大きな体を洗ってあげているわけだけれど。



ノワールはシャンプーされている、というよりは遊んでもらっているという感覚らしく、洗っている最中も動き回るものだから、私は泡だらけのノワールをやっとの思いで捕まえた。



「つかまえたーっ!ノワール、泡流すよ!」



もう、ノワールのおかげで服も上から下までびしょ濡れだ。

濡れてもいいようにTシャツと丈の短いショートパンツに着替えて正解だったかも。



そう思いながらホースを手に取り蛇口をひねると、私から見て正面にある裏口のドアが開けられた。