長い夜には手をとって


「うーん・・・。仲間さんって名前は何となく覚えてる。綾から何度か聞いたことがあるような・・・。でも津田さんが結婚なさったときは、私もう居なかったからねえ。お祝いの電報は打ったけど、奥さんを直接みてないのよ。・・・そんなに美人?」

 ようやく津田さんから目を離して私に向き直り、菊池さんは大きな声で言う。

「そりゃあもう!!バービー人形が生きてたらあんな感じじゃない?っていう人がいたくらい」

 ・・・その例えはイマイチわからない。

 首を傾げる私から視線を津田さんに戻して、菊池さんが言った。

「いいのよ。とにかく美女なの!というか、あの時北支社って美男も美女もごろごろいたのよねえ。ここは金融会社じゃなくてモデル事務所なの?って思うくらい姿形のいいのが、あっちにもこっちにも」

 あの人とかあの人とかあの人とか!私は興奮して名前を次々にあげる菊池さんに苦笑して、何か食べたら、と誘う。これ以上この子にお酒を飲ませたら、酔いにまかせて何かをしでかすかも知れない。

 夏に我が家での小さなパーティーに招いたときも、最後は酔っ払って前後不覚になっていたものだった。それで菊池さんの彼氏に綾が彼女の携帯で電話をして、迎えにきてもらったんだった。

「ほら、アルコール以外のもの、何か口にいれて」

 私がもう一度いうと、彼女ははいはいと呟いて、ビュッフェテーブルの方へと向かっていく。それを見てから、私は窓際へと移動を開始した。

 津田さんの人望の結果なのだろうから素晴らしいことだけど、こうも人が多くちゃ暑いしうるさくてたまらない。ちょっと外の空気でも吸って――――――――――


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