長い夜には手をとって


 やだ私ったら・・・。気持ち悪いでしょ、にやにやしながら買い物して。

 大量の食材、それに伊織君が昼に食べられるようにインスタント食品も。飲み物類や、暇つぶしにって読みそうな雑誌も。お菓子も。色々買い込んでしまった。

 だけど、別に伊織君は彼氏じゃないし。

 正しくはハウスメイトだし、これだって仕方なくだし、それに的確な表現を探すなら、家族に近いわけだし!だって綾の弟だし!

 よく判らないままに自分に散々言い訳をして、私は思い買い物袋を自転車にのっけて走る。

 空気は冷たく空はどんよりと曇っていて、今にも雪が降りそうだった。

 だけど、何かワクワクしていた。

 それは普段と違う状況だからなのだ、と自分に言い聞かせる。

 心の中で、何度もそう言い聞かせていた。




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