長い夜には手をとって

②レンズの中の笑顔



 水谷弟がいつでも家に、それも生活の中心である一階に居る。ということに、やっぱり最初二日間は慣れなかった。

 ぎこちなく食事を出したり、足が痛いのに何かを手伝おうとする伊織君に気を使ってお互いが疲れたりして、夜にはぐったりなる、そんな感じで。

 だけど流石に4日目には慣れてきて、一緒にいるという状況を二人とも受け入れ、それぞれのペースで物事が出来るようになったのだ。

 具体的には、私はそれまでと同じように部屋着にもこもこの上着を羽織って髪をヘアバンドでとめた状態でだらだら寛ぐようになったし、彼も部屋着姿で気楽に寝そべりながらテレビを観たりするようになった。相手が何をしていれも気にならなくなったのはかなり大きい。

 今までの家事担当もこの時ばかりは変わってしまう。私が前日の夜にゴミをまとめて玄関においておくと、翌朝出勤時もしくは帰宅時に伊織君がそれを出していてくれていたのだけれど、それも出来ない。

 それに洗濯物も。

 各自でコインランドリーへ行っていたのだけれど、今は伊織君の分も私がやっている。最初はどうしたものか!と家族でも恋人でもない男性の下着を触ることに困ったけれど、よく考えたらきっと恥かしいのは私より伊織君だろう。そう考えて、とっても事務的に洗濯物を処理している。

 そして初めて迎えたこの週末、私は敷きっぱなしの布団に寝転がって写真雑誌を読む伊織君を、食卓からじいーっと見ながら唸っていた。

「・・・やっぱり、台所でしようか。お風呂は狭くて介助の自信が全くないし」


< 93 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop