妻から女へ~不倫の扉
入口
今辛い。とても辛い。そしてこの辛さから逃れる術が思い付かない。
気付いた。私は旦那を愛していたと。
気付いた。旦那が私に無関心だったと。



「さやか…」
一瞬耳を疑った。旦那が昔の彼女の名前を呟く声で目が覚めた。最低な目覚めだ。
旦那はというと、グウグウと時々いびきをかきながらまだ眠っている。
(たまたま昔の夢を見たのかもしれないし。)
鈴香はそう自分に言い聞かせながら起き、朝御飯を作り始めた。
「ママ、おっはよー!」
すぐに息子二人が起きてきた。耳に入った嫌な名前を消したかった鈴香は、騒がしい子供達の声に救われた。
「おはよう。」後から起きてきた旦那と普段と何ら変わりのない会話を交わし、みんなで一緒に朝御飯をとり、それぞれの持ち場へ向かう。
(特に気にすることじゃないな。)
無理にモヤモヤを吹き飛ばそうとしながらその日を過ごした。


無理だった。


その日の夜、旦那がまた例の名前を呟いたからだ。
帰宅後、すぐにお風呂に入る旦那。
「さやか…会いたい」
こんな自分が嫌だと思いつつ聞き耳を立ててた鈴香は、サーっと血の気が引き気分が悪くなってきた。
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