溺甘プレジデント~一途な社長の強引プロポーズ~
興味を持ってしまっただけです


 あいにくの雨模様でも、傘の中にいると天気が味方していてくれたと思う。


「あのビルだから」

 仕事終わりに桃園社長と待ち合わせて、週に1度は食事に行くようになった。多忙な人だから、会えない時もあるけれど、日頃から連絡を欠かさず入れてくれるから、私を想う時間があるのだと知ることができる。



 連れられてきたのは彼が所有しているビルに入っている星付きのイタリアンで、待っていた様子の店長が席へ案内してくれた。
 間接照明がほどよく配置されていて、とてもムーディーな店内には食事を楽しむ男女の姿が多い。


「新しいお店ですか?」

「そうみたいだね。前は他の店が入っていたけど、売上げが悪いから出て行ってもらったんだ」

 食事のメニューを受け取りながら彼が言ったひと言に、経営者としての厳しさを見た。


「ここも頑張ってもらわないといけないけど、人気のあるシェフが新規出店したから問題はないと思うよ」



 私の好みが反映されたコース料理が予約されていたらしく、食前酒が飲み終わる頃にちょうど食事が始められた。


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