完璧な彼は、溺愛ダーリン
気持ちに蓋を。


「送っていただきありがとうございました」

「それじゃ」


改札の外まで出ると、そう返す葛木さん。
名残惜しそうに手を振る彼に私はペコリと頭を下げた。


それから、私は踵を返し一歩前へと踏み出した。
これで終わり。

帰ったら名刺は破り捨てる。連絡もしない。
だから、私と葛木さんのこれからはない。


だから、栞にも話さない。
きっと加藤君も言わないだろう。


葛木さんがすんなり諦めてくれないだろうけど。


少し歩くと、後ろから走り寄る音が聞こえてぐいっと腕を引かれた。
すぐに振り返ると、その相手は息を切らした葛木さんだった。


「……今このまま帰したら明日から全てが元に戻っちゃう気がした。
俺、君の連絡先を知らない。絶対に連絡して来ないでしょ?」

「葛木、さん」


掴まれた部分が熱い。強く握られているわけでもないのに、振りほどけない。

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