眼鏡を外した、その先で。
書斎のドアをノックしようとしたとき。
お父様の声が聞こえてきて手が止まった。

中にいるのは……お父様と高原?

立ち聞きなんてはしたないこと、そう思いつつも嬉しそうなお父様の声につい、耳をそばだててしまう。

『ありがとうございます』

『うん。それで式はいつにする?
早いほうがいいな』

『いえ、旦那様。
プロポーズはまだですので』

『ああそうだった。
すまん、すまん。
しかしもう、決まりだろ』

『だといいのですが……』
 
ゆっくりとドアから身体を離すと、音を立てないようにその場をあとにした。

……式?プロポーズ?
高原、誰かと結婚するんだ。
というか、付き合ってる人、いたんだ。
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