千日紅の咲く庭で
marrygold
杉浦 花梨、29歳、OL、独身。
彼氏なし。

天涯孤独になってしまいました。


朝まで元気で出勤する私を笑顔で見送ってくれたお母さんは、初夏の日差しの降り注ぐ、大切に育てた千日紅の咲く小さな庭でひっそりと冷たくなっていた。



喪服なんて持っていなくて、急いで準備した私が、喪主を務め、通夜や葬儀はバタバタ慌ただしく過ぎていった。


涙なんて、出なかった。


心なんてどこかに置き忘れた、ただの肉体の塊のようになってしまって、意識はあるのに感情が真っ平らになってしまったような感覚のまま、家にたどり着いた私は、遺骨になってしまったお母さんの遺影をぼんやりと眺めた。

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