祓魔師陛下と銀髪紫眼の娘―甘く飼い慣らされる日々の先に―

国王陛下の秘密と銀髪紫眼の娘の隠し事

 この城は要塞としてではなく、宮殿としての役割が強かった。おかげで城の窓はどれも大きく、そこから差し込む太陽の光の力を借りて、懸命に明るさを取り込んでいる。

 日が沈んで夜になると、できることは限られてくるので、時間の使い方は大事だった。

 廊下の幅はリラの家よりも広く、歩くだけで緊張してしまう。ピカピカに磨かれた床は、外からの光を反射しキラキラとしていた。そして鏡のように、高い天井を映し出している。

 窓から見渡せるのは広大な王家の庭だけだった。十分に手入れされている木花は季節によって違う顔を見せてくれる。今は夏から秋にかけて季節の変わり目ということもあり、木々の色が緑から赤に変わっていく様がそれをよく表していた。

 この城はどこまで広いのか見当がつかない。今、リラたちがいるのは城の中心部だった。王が仕事をするうえで欠かせない執務室や謁見の間、王と近しい者たち用の居住スペースなどを有し、他にも食堂や大広間、リラが使っている客間など。

 窓から見える別塔についてフィーネが説明を加える。この城には塔がいくつかあり、渡り廊下のようなもので、それぞれここと繋がっている。使用人たちの住まい、カペレ(礼拝堂)、そして後宮。

 話を聞きながら、リラはフィーネの支えを借りつつ部屋から一番近い広間へとゆっくり足を進める。あれから数日経ち、リラの怪我も徐々に回復の兆しを見せている。

 そこで薬師からの許可をもらい、ろくに歩いたり動いていなかった分、落ちた筋肉を取り戻すため部屋から少し歩いてみることにしたのだ。
< 28 / 239 >

この作品をシェア

pagetop