ミツバチジュエル
☆ジュエリー・アイズにて☆


……店内に置いてある、高級ティッシュの箱にプリントされた真っ白いもふもふウサギを見ていたら、遠いあの日にプロポーズされたことを思い出してしまった。

まだ三歳だったけれど、あれは本当に嬉しかったっけ。

私だって、大事な人間だったんだ、彼に『けっこんしよう』と言われるほどに。

おそらくプロポーズしてきた相手は綺麗さっぱり忘れているのだろうけれど。

あれ以来、全く男っ気なし、全て片思いのまま終わっている私の四半世紀を返せ。


……まあ、彼が私とそういう関係に発展しなかったのは、私に原因がある。

多感な時期に、私が彼と思いっきり距離を置いてしまったからなのだ。

つまり、自業自得。


プロポーズされた経験はあっても、誰とも付き合った経験のない私が、ジュエリーショップに勤務して、日々結婚指輪や婚約指輪を販売しているのだから、皮肉なものだ。

ため息が出た。


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