京都チョコレート協奏曲
全然、と、おれはかぶりを振った。
2人して奥手じゃ、仲が進展しようもない。
どうやって発破をかけてやろうかと、平ちゃんと何度か作戦会議をしたことがある。
「ところで、平ちゃん、飯、どこ行く?」
「ラーメン食いたい。夢を語れとか、天下一品とか」
「却下。あの食べ物はラーメンじゃない。ちょっと冷めたらスープに箸が刺さるくらいの脂の量って、大学院生の胃袋には無理だから。しかも、かなりの大盛りだし」
「じゃあ、総っち、何がいい?」
「普通に定食系。きちんとタンパク質を摂取しろって、OBの山南さんからも言われた」
「定食か。ハイライトは?」
「やだ。これくらいの時間になったら、あの店の油、すごい匂いするじゃん。暖包《ヤンパオ》、行こうよ」
「昼に店の前を通ったとき、臨時休業の貼り紙があったぞ。鷭《バン》は量が多くてイヤって言うだろ? 風媒館《ふうばいかん》は空いてりゃいいけど、狭いから望み薄かな」
「21時過ぎたら、体育会の学部生たちが一気に食事に向かうから、どこも混むもんな。それにしても、いちくん、ほんとに遅いな」