暗黒王子と危ない夜

扉が開いたと同時。
眩しい灯りと、驚くほどの騒音に包まれた。

けれど、あたしたちが一歩足を踏み入れた瞬間、それがピタリと静まりかえる。



「……あ、本多じゃん」


最初に言葉を発したのは、奥のソファに座ってスマホをいじっていた人物だった。

目が合って、中島くんだとわかったのもつかの間。


それを合図にするように、中にいた人たちが一斉に立ち上がり、周りを取り囲む。


「七瀬君……!」
「三成君……!」
「お疲れ様です!!」


誰もが口々に名前を呼び、あっと言う間に埋もれてしまった。


「お久しぶりです!」
「あっ、荷物お持ちします!」
「三成君、みかんジュースどうぞ!」
「うわっ、誰ですかその女……!?」


パニックになったあたしは、無意識に三成くんの袖を掴んでいた。


「ビビんな。いつものことだ」


そっと耳打ちされ、震えながらもコクンとうなずく。


「おい、おめーらうるせぇぞ! 七瀬君困ってんだろうが!」


一人がそう声を上げて、しだいに静かになっていく。

再びしん…となったところで、本多くんが口を開いた。


「今日はこの子いるから、あんまり騒がないで」

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