暗黒王子と危ない夜
三成くんがそっと体を離す。それから、あたしの腕を引いて歩き出した。
「しょうがねえから、今日は俺が送ってやる」
「え……」
「早く帰りてぇんだろ。だったらバイクが早い。裏に俺の置いてるからついて来いよ」
帰る手段にバイクなんて考えていなかった。そもそも初めから、あとさき何も考えていなかった。
ただ目を背けたくて、倉庫を飛び出してしまった。
「お前が帰りたいっつーから仕方なく出してやるんだからな。嫌だとか言うなよ」
それもそう。自分で誘われるままに着いてきておいて、勝手に帰りたいなんてワガママ言って迷惑をかけているんだから。
「うん。……ありがとう」
少し歩くと倉庫の角を曲がると屋根のついた駐輪場のようなものがあった。
そこには5台のバイクが停めてあり、三成くんは1番手前のものに手を掛けた。
「ほらメット」
片手でほいと、投げてよこされる。