暗黒王子と危ない夜
三成はそこで口をつぐんだ。
あたしもそれ以上はもう踏み込まない。
あくまで部外者。
あの夜に本多くんと教室で鉢合わせていなければ、今ここに居ることもなかった。
あたしは、本多くんたちの世界にたまたま入り込んでしまっただけの存在にすぎない。
本多くんにはエナさんがいる。
三成も、優しくしてくれるけど、本当は
──。
「三成は、あたしがいるの嫌じゃない……?」
まだお昼にも関わらず、室内は薄暗い。
窓のブラインドは閉まっていて、天井から吊るされたペンダントライトのぼんやりとした灯りだけがテーブルを照らしている。
「嫌って。何だそれ」
思いの外、三成が不機嫌な声を出したので気まずくなり、べつの方向に視線を移せば。
そこには今まで気づかなかった花形のステンドグラスがあって、暗い中にも鮮やかな色を映し出していた。
その場所だけ切り取られた別世界の空間みたいで、もしくは異世界の入り口みたいで、神秘的に輝いて見えた。
「俺さ基本的に女、嫌いなんだよ」
「え、そうなの?」
「パーティーとか行くと、着飾った女たちが色目寄こしてくんだ。それにいちいち可愛いとか似合ってるとか言わなきゃなんねぇ。んなの、ただの挨拶だってのにぎゃーぎゃー騒ぐし」
自分の思ったことは素直にはっきり言わないと気がすまないのが三成の性分だ。
今の言い方はいささか失礼な気もするけれど、三成らしいといえば三成らしいし。