暗黒王子と危ない夜
夜明け


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午後8時半を過ぎた頃。


「いい闇医者を知ってる」と。灰田くんに連れられてたどり着いた個人の病院にて。


先に病室から出てきたのは中島くんだった。

待合室の椅子の空いたスペースに腰をおろす。




「七瀬も意識戻った。……急所は外れてたらしい。ちゃんと、助かる」



その言葉に、全員がほっと息をついた。

それから中島くん、はこれまでの出来事を、ぽつりぽつりと話し始めた。



小学校、中学校、高校の話。

本多くんのお父さんの話。自分のお父さんの話。

鎮西会のこと、黒蘭会のこと。


話し終えると、やっと顔を上げて、最初にあたしを見た。



「うさぎ、連れてきてくてありがと」



渡したぬいぐるみをそっと撫でる。



「……皆には謝っても謝りきれない。本当のことをずっと隠してた。七瀬には、いずれ話すつもりだったけど……」



ごめん、と頭を下げた中島くんに、慶一郎さんは優しく微笑んだ。



「琉生君。話してくれてありがとう真実がわかってよかった。これで俺も……ようやく諦めがつく」



諦めというのは、たぶん、本多くんのお父さんのこと。



「……というのもね、俺が黒蘭会を作り直したのは、裏ルートを使って佳遥さんの情報をどうにか得ようと思ったからなんだ」



慶一郎さんが悪業を営んでいることに変わりはなくても、背景にそんな理由があるとわかれば、全く印象が変わってくる。


きっと……悪い人ではない。

誰よりも、黒蘭を大切にしてきたんだろうな……。

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