イジワル上司に甘く捕獲されました
失恋と引越
「美羽、別れよう」

「……へっ?」

待ち合わせ場所に着くなり、言われた拓斗からの言葉。

意味がわからず、私は思わず聞き返す。

「……何かさぁ、美羽、やっぱり俺ら友達のほうが合ってると思わない?」

驚くほど爽やかに言い切る拓斗に。

私はポカンとする。

……何を言っているの?

拓斗と私は大学生の時に知り合って。

友達付き合いをしていたのだけど、卒業して、お互いに就職してからは会うことも殆どなかった。

昨年、開催された同窓会で偶然再会して。

それからちょくちょく、二人で会うようになり。

しばらく経って、告白されて付き合うようになった。

拓斗は何事も単純明快に捉えてポジティブ過ぎるところもあるけれど、一緒にいると楽しくて。

これまで、特に大きなケンカをしたこともなかった。

浮気をされたこともなく。

穏やかに仲良く付き合ってきたつもりだった。

ただ、最近は仕事が忙しいと言われていて、拓斗とのデートは一ヶ月ぶりだった。

久しぶりに会える、と思って私なりにお洒落をしてきた。

四月の夜はまだ気温が低いので、ノーカラーの紺色のコートに、ペパーミントグリーンのおろしたてのレースニットアンサンブル、白いフレアスカート……。

悩みを吹き飛ばすような明るいカラーを選んだ。

相談したいこともあった。

なのに。

いきなりの大打撃だ。






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