イジワル上司に甘く捕獲されました
試練の始まり
あの日、潤さんと峰岸さんのことを聞いてから。

峰岸さんの姿を店内で見かける度、頭の片隅にその話を思い出した。

不安で胸がざわつくことがないわけではなく。

峰岸さんはやっぱり素敵な人だから。

気持ちを吐露してくれた潤さんを疑うわけではないけれど、どうして潤さんは私を選んでくれたのだろうと不思議な感覚に陥る。

……峰岸さんが歓迎会の時のように、また潤さんに切実に想いをぶつけたら。

潤さんは揺れないのかな、と思ってしまう。

だけど。

あんな風に真っ直ぐに私に想いを向けてくれた潤さんの気持ちを信じて傍にいたい、そう思う自分がいて。

話してもらえたのに、知らないより安心できたのに、ぐらつく自分の気持ちを、なかなかコントロールできず。

峰岸さんとはあの日以来、仕事以外で個人的に話すことはなかった。

私もどう話しかけていいかわからず。

会話の糸口を見つけられずにいた。

一方で、峰岸さんは支店に溶け込んでいないわけではなく。

厳しい指示や指摘はするけれど、決して理不尽なことはせず、私に対してもとても公平な上司だった。
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