Spice‼︎
充てがうモノと充てがわられるモノ
桐原は今夜、風間と待ち合わせている。

看板のない知る人ぞ知るという小さな料亭に着くと
1番奥にある部屋に通された。

「早かったな。」

「桐原さんがいつも遅刻するからですよ。」

桐原が風間の前に座ってグラスを持つと
風間がビールを注いだ。

「じゃ、お疲れ。」

そしてグラスの半分ほどビールを飲み干す。

「経営戦略部はどうだ?」

「まぁ、あまり居心地は良く無いですね。

入ったばかりの年下の男がいきなり主任で入ってきて
なんだこいつって顔で見られてます。」

「どうせ、もう少ししたらまた異動だろ?

次は海外事業部あたりかな?」

「海外事業部に行ったら出張増えますよね?」

「だろうな。」

桐原がタバコに火をつけて
風間が半分開いたグラスにまたビールを注ぎながら言った。

「それはまずいな。」

「梨花か?」

「はい。」

「梨花が寂しいときはオレが相手するさ。」

「桐原さんじゃ梨花さんの淋しさは埋められませんよ。」

桐原は煙を吐きながら
風間を睨みつける。

「梨花はお前に夢中だしな。」

「なんで梨花さんを僕に抱かせたんですか?」

「お前なら梨花の良さが分かると思ってな。

しかもいい男だし、梨花の好みだ。

結局梨花はすぐにお前に惚れただろ?」

「惚れてるのは僕の方ですよ。

僕に惚れたら桐原さんは梨花さんと別れるんだと思ってました。」

「あんないい女手放せるか?」

梨花と風間の出逢いは偶然ではなく
桐原に仕組まれたことだった。



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