男嫌いな女王様とクールな臣下
女だけの街


堀田朱音は、自身が社長を努める「B.C. Building Inc.不動産」の社長室から窓の景色を見ていた。

窓の向こうは、鈍い色の曇り空がどこまでも広がっている。

新しいビルが完成してから、この社長室で、窓から見える景色を眺めるようになった。

自身が企画した、商業施設の中心的建造物、「B.C. square TOKYO」は、

55階建の超高層ビルだけれど、社長室があるのは10階である。

出来上がったビルから景色を見るのは、どんな高さで、何度経験しても楽しいものだと朱音は思う。


高いビルを建てたというのに、眺めのいい高い場所は、会員制クラブと高級レストランに譲った。

権力者のように、ビルの最も高い場所から下を見下ろしたいという、欲求がないわけではない。

だが、そういうくだらないことで満足感を求めるのは愚の骨頂だと、幼いころから祖父の薫陶を受けて来た。

収益の見込めるものは、商売をしてすべて回収すべきである。
己の満足度など、二の次だ。

祖父ならそういうだろう。

間違っても、自分のものだと錯覚して、いい暮らしができるなどと思ってはいけない。

祖父も生きていたら、自分がやって来たことを、よくやっていると言ってくれるだろうか?
朱音も時々考える。


昨年末、商業施設「B.C. square TOKYO」のグランドオープンを迎えた。
ようやくここまでこぎつけた。

このプロジェクトとして計画の進み具合は、こころざし半ばというところ。
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