愛より金が大事です。
安定した生活を長い将来約束できるくらいの基盤のある男なら、別に多少の難ありでも構いません。


不細工?
女癖?


そんなことは些細なことです。
金があるなら、全部水に流そうじゃないか。


いくら私だって、そんな主張を声を大にして口にするほど、空気が読めないわけではない。
でも大抵の女は愛も大事だけど金銭面だって確実に見てるし、私はそれがちょっと極端になっちゃっただけだ。


育った家庭が特別極貧だったわけではない。
極々普通の、母親がパートに出て晩御飯のおかずをスーパーの特売で日々やりくりする程度の、余裕はないけどあったかい家庭だった。


父親はたまに残業したって夜の九時には帰ってくるし、浮気や暴力で荒れたこともない。
誕生日にはいつまでもホールケーキを買いたがる、仲の良い両親だった。


のほほんとした、本当に呑気な、両親だった。
せめてどちらかでも、金にがめつい性格であったなら、多少の貯金か生活に困らないくらいの保険くらいはかけておいてくれたはずだ。


雨の夜。
五つ年下の、高校生になったばかりの弟と心許なく手を繋ぎ途方にくれた。


あの日からの、二進も三進もいかない状況を、私は二度と忘れまい。
弟には、決してこんな苦労はさせまいと、心に誓ったのだった。


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