副社長と愛され同居はじめます
「いただけるんですか」

「何?」

「いえ、ですから。お金」

「ははっ。こはるはストレートだな」



いやいや。
あなたもさっき、金が必要なんだなってかなりストレートに言ったじゃないですか。


と言い返すよりも、下の名前を呼び捨てられたことに、不覚にもどきりとして反応できなかった。


まあ、もし万一ここで意味のわからない札束を積まれても、何か怖い。
警戒しながら成瀬さんの様子を窺っていると、彼は手の甲に顎を乗せ少し考えるような仕草をした後。



「……とりあえず、ロマネでも入れとけ」

「え? あ、はい」



ロマネ。
なんかすごく高いお酒だよね、あんまりよく知らないけど、あるのかな?



さっきからはらはらとこちらの様子を見ているウェイターを呼んだ。



「ロマネって……そ、そんな高価な酒うちにはないって、銀座の高級クラブじゃないんだからさ」

「え……そうなんですか」

「それでは、貴方がこの店で一番美味しいと思うお酒を御願いします」



私とウェイターのコソコソ話を聞いていたのか、成瀬さんがえらく馬鹿丁寧な言葉でそう言った。
なんだか、誰に対しても偉そうなのかと勝手に思っていたから少し、意外だった。


どうやら、成瀬さんの言葉の意味は、つまりこの店で一番高い酒を持ってこい、という意味だったらしい。
ウェイターが喜び勇んでドンペリを持ってきたのは言うまでもない。

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