副社長と愛され同居はじめます

愛のお値段




「夫婦とは話し合うものです!」



運び込まれた引越し荷物はごくわずか。
衣服は皺にならないように丁寧に梱包されているので、箱数で言えばかさばっているけれど、それほど量が多いわけじゃない。
ましてや、半分以上が成瀬さんに買ってもらったものだ。


古い衣装ケースやパイプベッドなんかはどうやら処分する準備のようで。



「わかった。処分していいか?」



ここに至るまでに普通話し合ってるから!
開き直ってるのか馬鹿にしてるのかどっちだ。


この人は本当に私と夫婦になる気があるのか!



「ダメです。アパートに置いといてください」


まだ、帰る場所が一切なくなることには不安を覚えてしまうというのが本音で、家具まで空っぽにされたら何かアパートもそのまま解約されそうだった。


む、と不満そうに彼の眉が寄る。
だけど、それ以上何も言わなかった。



なんとなく、だけど、彼は本当に「話し合う」「尊重しあう」という事柄に慣れていないのだと思った。
脱力しながら、積まれた荷物に目を通す。


その中にちゃんと、両親の写真と位牌がありホッとした。

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