ムシ女
豹変
陽介君は言った通りあたしにご飯を持って来てくれた。


それを昨日買った人形用のお皿に盛りつけて、瓶の中に入れてくれる。


「ね、ねぇ陽介君……」


「なに? 嫌いな食べ物でもあった?」


「そうじゃなくて……」


あたしは左右に首を振った。


美味しそうな匂いが、少ない食欲を刺激している。


「瓶からは、出してくれないの?」


言葉が喉に張り付きそうになりながらも、そう聞いた。


陽介君はその言葉に大きく目を見開いた。


瓶の曲面のせいで、その顔はひどく歪んで見える。


まるで魔物のようで背筋が寒くなった。


「百合花にとって外の世界は危険だらけだろ? この中にいた方が安全なんだよ」


陽介君がもっともらしい事を言う。


確かに、体が小さなあたしにとっては何もかもが危険だった。


だけど……。


「この中にいたら、あたしなにもできないよ?」


そう言うと、「何もする必要はないじゃないか」陽介君は、そう言ったのだった。
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