苦手だけど、好きにならずにいられない!
セミ・スィートルームの憂鬱

開催1日目。

9時開場なのに真っ赤なユニフォームのワンピースを着た女の子が現れたのは開場10分前だった。

初日は打ち合わせがあるから、1時間前に来てと広告代理店を通して伝えていたはず。
こっちは物品の搬入やブースのセッティングで、早朝から大わらわだというのに。

大して急ぐ風でもなく、金髪に近い栗色のストレートヘアを揺らしてぴょこんと頭を下げた。

すごく綺麗な髪。真っ白な肌に大きな瞳にバッサバッサの睫毛。

さすがハーフだ。私の人生でこんなに華奢な人は見たことない。腕とか足とか、ヒョエーと声を出してしまいそうになるくらい長くて細い。

そんなボディとは正反対なグロスてかてか、ぽってり肉感的な唇での第一声。


「こんにちはー浅田ビクトリア18歳でーす!みんなビッキーって呼んでまーす!
以後、お尻拭きを!」


外見とは似つかわしくない甘ったるい声で挨拶してくれたけど……え、何?お尻拭き?
イライラが一瞬にして吹き飛ぶ。

私の?な視線に気付いたのか、

「あー、違った、お尻拭きじゃないし。お見知りおき、だったあ!やっだあ。恥ずい!マジヤバい!あ、ゴメーン、
ビッキー、日本語苦手で!あ、英語は得意って意味じゃないから。
英語は全然だめ!ハーフなのに。
めっちゃ喋れそうって言われる!あっはははは!」



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