苦手だけど、好きにならずにいられない!
ストロベリーハンティングに行こう!


次の日の昼過ぎ。

リンコーンという甲高い音を立てて部屋のチャイムが鳴った。デレクがニューヨークから戻ってきたのだ。

大きなスーツケースを運んでくれたポーターにチップを与えたあと、ネクタイを緩めソファに腰を沈めた。

仕事から帰ってきたばかりなのにノートパソコンを取り出し、何かをチェックし始める。


「社長。お帰りなさいませ。バラの花束ありがとうございました。私の寝室に飾らさせて頂いてます。

あの、部屋探しの方ですが、仕事に追われてまだこれだという物件に巡り合っておりません。もう少し居させて頂いても大丈夫でしょうか?」


「ああ。構わないよ。じっくり探しなさい」


パソコンから目を離し、ドライアイなのか両目をぎゅーと瞑る。


「社長、お疲れですね」

「ああ。長いフライトは苦手だ。また2日後に乗るかと思うとうんざりだよ」

「大変ですね。
そうだ、いちご食べませんか?」


私はガラスボウルに入れたいちごをデレクに見せた。


「…いちご?」

「ストロベリーですよ。このお部屋って素晴らしいけれど、何か欠けてる。
季節感です。日本に住む者は季節感を大事にしなくてはなりません。

だから私、このビルの2階にあるコンビニエンスストアでいちごを買ってきたんです。さっき一つ摘み食いしたんですけど、すっごく甘くて美味しいいちごですよ!」


「ほお。
じゃ、あれもミス・ヒムラが?」



< 63 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop