次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
業務名はデート
6時きっかりに常務室から出て来た駿介に遅れないように席を立つ。

共有のシステムにも夏希さんの個展に行く予定は入力してあるし、何かあれば室長から直接連絡がくるようになっている。
「お疲れ様」と声をかけてくれた幸恵さんに頷くと私を待つ事なく歩いている、おおきな背中を追いかけた。


走るに限りなく違い早足で駿介に追い付き、なんとか駿介にエレベーターのボタンを押させずにすんだ。

「もう定時は過ぎたぞ」

自分でボタンを押すつもりだった駿介が出しかけた手をパンツのポケットに戻しながら言う。レディファーストが身に付いている駿介には秘書とはいえ、女性に扉を開けさせたりボタンを押させるのはどこか違和感が拭い去れないらしい。

業務中は仕方ないと慣例に従っているが、定時後や仕事相手が一緒じゃない時はさせないのだ。もちろんそれは私に限ってではない。こないだは駿介に扉を開けてもらった上に先に通された幸恵さんが、驚き過ぎて半分固まってエレベーターから降りて来た。

「まだ仕事中ですし、社内ですので」
< 35 / 217 >

この作品をシェア

pagetop