次期社長はウブな秘書を独占したくてたまらない
インプリンティングな想い
國井の一族とはいえ、名字も違えば財力も違う。傍流の傍流な我が家は世間一般の家庭と何の変わりもない。違う事といえばお正月や何かの行事の時に父が一張羅のスーツを着て本家にご挨拶に伺うくらいで、私の生活に『國井』はほとんど関わりがなかった。

それが一変したのは私が小学生になった頃。

3人の子供ばかりか5人の孫さえ男の子ばかりだった前当主夫人が身近に女の子を置きたいと言い出したのだ。その頃『國井』一族に産まれたのは男の子が多かったうえに、数少ない女の子もまだ母親の側から離れられない幼児か、自分の世界が出来上がりつつある中高生ばかり。

たまに本家に来たりしても子供自身に生活の負担がないように、と夫人が希望した小学生女子は私しかいなかったのだ。

しかもその頃、我が家には年の離れた弟が未熟児で誕生したばかり。
両親は当然、弟にかかりきりだったし、渡りに舟だったのだろう。どうせなら、とたまに本家に行くだけだったハズの話は私の本家への引越しと変わった。

前当主夫人、つまり駿介のお祖母様は本家の離れにお一人暮らし。もちろん、敷地内には住み込みの家政婦さんもいるし、渡り廊下を使えば現当主一家も住んでいる。けれど、夫を亡くして寂しくなったのだろう、というのが周りの理解だった。
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