次期国王は初恋妻に溺れ死ぬなら本望である
5、囚われの姫君に愛を伝えて
翌日にはスワナ公が帰城して、世継ぎの男子の誕生を祝うパーティーが開かれた。
「パーティーというか、ただのどんちゃん騒ぎだな」
終わりの見えない酒盛りから逃げ出してきたディルが、呆れたようにつぶやく。
スワナ公もスワナ公国の重鎮たちも、みな異常なほどの酒好きで、飲めや歌えやの大騒ぎだった。はっきり言って、ミレイア王国で同じことをすれば、品がないと白い目で見られることだろう。
「でも、ちょっと羨ましいわ。上品ぶった顔で腹の探り合いをしているミレイア宮廷のパーティーと違って、みんな本当に楽しそうだもの」
率直すぎるプリシラの感想に、ディルもうなずいた。
「スワナ公が信頼されている証拠だろうな。来てよかった。色々と勉強になったよ」
ミレイア国王のように強さと厳しさで国を治めるのもひとつの道だが、スワナ公のようなやり方もある。ディルはスワナ公から大いに刺激を受けたようだった。
ディルとはまた違う理由で、プリシラもこの国に来られてよかったとしみじみ感じていた。
「あぁ、マリー叔母上が呼んでる。行こう」
そう言って差し出されたディルの手を、プリシラは迷わず握り返した。ごく自然に手を取り合える。そのことがとても嬉しかった。

(少しずつでいい。信頼と愛情を積み重ねていきたい。そうしたら、義務として始まった私たちも、いつか本物の夫婦になれるかもしれない)
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