パーフェクト・インパーフェクト
PERFECT FOR ME :')




✧︎*。




「そんなに身長が高いわけでもなく、ランウェイを歩くのが得意なわけでもないわたしに、このような素晴らしい賞をいただけたこと、とても光栄に思います」



何度思い返しても上手じゃないスピーチだった。


しっかり原稿を書いてメチャクチャ練習したのに。

いけちゃんにも100回くらい聞いてもらった。


でも、ダメだったよ。
手が震えてしゃべるどころじゃなかった。

トロフィーを床に落とさないことだけに、全神経を集中させてしまった。



慣れないタイトロングドレスを翻して通路を急ぐ。


こんな赤色が本当にわたしに似合っているのかな。

授賞式が終わってずいぶん経つのに、まだこんな心配をしている。


授賞式に輪をかけて、その後の記者たちからのインタビューが、本当に疲れたんだ。

いつものキュートスマイルじゃない、落ち着いた微笑みを絶やさないでいなきゃいけないのも、しっかりはっきり聡明な受け答えをしなきゃいけないのも、本当に。


早く楽屋に帰って、ドレスを脱ぎ捨てて、冷たいものをいっき飲みしたい!



「――上月杏鈴さん」



ずるい人だ、って。


何度も思ってきたし、

たぶんこれからも、何度だって思っていくのだろう。


「……なん、で」


こぼれそうに大きな花束。

そのむこう側にいる人は、わたしがあまりにも忘れられずにいるせいで、幻覚でも見ているのだと、本気で思った。

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