冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「本人には訊きづらくて……」

「ダメだよ、また怒られちゃうよ? 『俺のいないところで、俺の話をするな』ってね」

話を聞くことに躊躇いを感じはじめて口籠っていると、三坂さんがクスッと笑った。

「もっと思い切っていいんじゃないかな」

三坂さんの言葉に胸の奥を叩かれたような気がした。本当は自分でも、積極的になってみようかなって思っている。でもまたからかわれるんじゃないかとか、そういう不安があって踏みとどまってしまうのだ。

三坂さんに話を聞いても、本当に知りたいのは由佐さんの気持ち。

エレベーターがエントランスに着くと三坂さんは、「今度、ゆっくり遊びにきてね」と、最後まで優しく接してくれて、手を振ったあとエレベーターで再びお店のある階へと上がっていった。

由佐さんと香弥さんは、楽しくお酒を飲むのかな……。
考えたらすぐに気分が沈んでしまう自分の余裕の無さに呆れながら、わたしはため息をついてそのまま自宅へと帰るしかなかった。
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