冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
「そういえば午前中、谷池としていた俺の話ってなに? 今礼を言ったくせに陰口だったらショックだな」

「か、陰口じゃないですよ!」

「違うなら、なに?」

言えよ、と目で迫られているような気がして、誤魔化すなにかを考えようにも雰囲気に勝てなかった。

「……以前課にいた人たちが辞めた理由って、市崎課長となにか関係があるのかなと」

「ははっ、君それさ、よく俺に直接言えるよな。失礼だと思わないのか?」

「か、課長が、俺に直接聞けっていっていたじゃないですか!」

そうだよ、由佐さんは直接聞けってわたしに言った! なのに笑われるなんて納得いかないけど、でも、やはり失礼だよね……。遠慮してそれ以上黙っていると、息をついた由佐さんは意地悪な顔になった。

「俺って“最低”だから、前の課長を蹴落としたとでも思った?」

「そ、そんなことは……」

「残念ながら、それはない。彼らは自分の意思で勝手に辞めた」

彼の冷淡な言い方はいつものことなのに、妙に気になった。
『勝手に辞めた』という部分が、とくに引っかかる。

でもそれ以上なにかを聞くことはできなくて、気になりながらもわたしは自分のデスクに戻って帰る支度をした。
とりあえず、由佐さんも思いやりのようなものはある人なんだなと、そう思った日だった。
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