冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
疲れているんだろうな……。
わたしは目を閉じている彼の整った顔を窺いながら、ソファへ近づいた。再会したときは最低な男だと思っていたはずなのに、今は彼のことを気にして心配しているなんて……自分でも不思議でしょうがない。

由佐さんの静かな寝顔を見つめたあと、シワにならないようソファにかかっている上着を片付けてあげようとしたとき、急に手首を掴まれた。びっくりして由佐さんのほうを見ると、彼は薄く目を開けている。

「……なんだよ?」

「わっ、す、すみません、起こしてしまいましたか……上着、ハンガーにかけてあげようかと思ったんです」

「あー……目を閉じていただけで眠ってない。上着はいいよ、すぐ着るから」

えっ、寝ていたわけじゃなかったんだ。ということは、わたしがじっと見ていたこと、気づいたかな。
わたしの手首を離して起き上がった由佐さんは、上着を掴むとこちらを見ていたずらっぽく笑った。

「俺のそばでしばらく突っ立ってただろ」

「そ、それは、あの……」

「寝込み襲われるのかと思った」

「っ……!? お、襲いませんよ、変なこと言わないでください!」

由佐さんはからかいたいだけ。そうわかっているのに、わたしは焦って言い返してしまう。認めたくない彼への想いに反発したくて、自分でもムキになっているのかもしれない。
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