冷徹部長の愛情表現は甘すぎなんです!
三坂さん、わたしが由佐さんのことを好きだってやっぱり気づいているのだろう。
だからって、慌てちゃうようなことはしないでほしい!

なぜかムスッとしている由佐さんと笑っている三坂さんの間に挟まれながら困っていると、新しいお客さんが来店した。
いらっしゃいませ、と応対するために立ち上がった三坂さんだったが、ピタリと体の動きを止めたので、どうしたのかと見上げる。

三坂さんはお客さんを見て、驚いているような顔をしていた。なので、わたしはもう一度入口のほうへ顔を向ける。

長い黒髪の綺麗な女性がひとり、店内をぐるりと見渡したあと視線が三坂さんを捉えると、女性はにこりとする。
その微笑みではっとしたのか、三坂さんは「香弥《かや》さんじゃないですか」と言いながら女性の方へ向かった。

さすが三坂さん、ああいう綺麗な女性の知り合いがいるんだなと、そう思いながら視線を目の前に戻そうとしたとき、由佐さんも女性の方を見て動かないことに気づいた。

わたしからは彼がどんな表情をしているのかわからないけれど、首の向きはずっと変わらない。

三坂さんと言葉を交わしていた女性が、ふと、こちらを見て再び微笑んだ。
今のって……由佐さんに笑いかけたんだよね? 由佐さんもこの女性と知り合いなのだろうか。
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