「ごめん」


私が今居る場所は、ムード満点の「CHERRYBLOSSOM」。
オフィスビル「B.C. square TOKYO」の五十四階に入っているバーだ。


このバーでプロポーズをし結婚が決まったカップルは、もれなく五十三階の高級レストランを貸し切り、挙式後の披露宴を行う権利を得る事が出来るらしい。

綺麗な夜景と、高級な食事を堪能しながら行われる披露宴。
さぞ利用料金も高額に……。と色々考えてしまうところだが、バーとレストランの経営者が同一人物の為、そこは経営者の厚意により、格安料金になるらしいのだ。


「らしい」というのも、これが噂なのか本当なのか。
実のところ、私の周辺で現実に経験した者がいないため、真相は定かではない。


そんな夢のような場所に、恋人から呼び出された私は「もしや、今夜プロポーズをされるの?」などと、早くも浮き足立ち。
プロポーズをされた返事の台詞まで考えながら、バーにやって来ていた。


なのに。
一年程付き合っていた恋人からは、プロポーズの言葉を聞くどころか、別れを告げられてしまうなんて。

全くもって予想外、想定外の何ものでもなく。

彼が口にした「ごめん」という言葉だけが、さっきから何度も私の頭の中を駆け巡る。
予想していた台詞と違うために、当然考えていた返事の台詞など役に立たない。

椅子に座りながらも放心状態の私に、彼が再び「芽里、ごめん」と口にした。


この作品のキーワード
オフィスラブ  胸キュン  ときめき  運命  独占欲  大人の恋  片思い  上司  再会