あまりさんののっぴきならない事情
 避けながら、
「すみません」
と言うと、あっ、はいっ、と言ったその女性は赤くなる。

 ……これだよ。

 俺が話しかけたら、普通の女の反応はこうなのに。

 あいつは、最初から、ビクビクするか、目をそらすかだったからな。

 珈琲を運んできたあいつをカフェで自分が見上げたときなど、仔うさぎのようにぷるぷる震えていた。

 だが、そのさまを思い返すと可笑しくもある。

 海里は、あまりの甘い珈琲を買いながら、ま、もうちょっと放っておいてやるか、と思った。

 しかし、どうやら、あまりの箱入り具合をあまく見過ぎていたようだった。









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